行先表示幕の更新・修正が必要なタイミングは、新しく駅ができた時や、ダイヤ改正に伴う列車種別が追加になる時。南海電気鉄道様もダイヤ改正のタイミングを迎え、行先表示幕を更新する必要がありました。
問題は、修正する行先表示幕の数量がとても多いこと。費用が嵩むのを避けるために、なるべくコストを抑えた方法を模索しました。
ご提案01
行先方向字幕は、製作がとてもシンプルなようで、様々なことに気を配りながら製作していかねばなりません。鉄道会社ごとに定められた色、デザインを統一して作ることはもちろんのこと、幕の回転がうまく機能するかなど技術的な側面も確認する必要があります。
当社では、長きにわたり近鉄の行先表示幕の製作に携わっているため、最小限の対応で抑えられるノウハウがあります。
製作を進めるにあたっては、現物の見本をお借りして進めていきます。その主な作業は〈書き換え〉と〈追記〉。
不要になった記載を塗り消して、その場所に新たに必要な項目を書き加える作業です。例えば、新規で「準急・難波」行きの列車ができた場合──表示が不要になった行先や種別を消して、そこに新たに「準急・難波」と書き加えます。
塗り作業などは必要なく、幕の空いているスペースに新たな内容を書き入れる作業です。「書き換え」に比べると、とてもシンプル。
修正内容を踏まえて、対応方法を検討していきます。南海電気鉄道様のご要望を踏まえ、〈書き換え〉は不要で〈追記〉のみで可能と判断。そこから、文字サイズ、フォント、文字色などの細かな仕様をおさえて調整していきます。このように、ニッチな分野ですがノウハウが蓄積されているため、無駄のない適切な提案ができます。
ご提案02
これまでに作った幕の貯蔵品が車庫に保管されていました。お客さまの中には、幕を修正する場合、「ロールは丸ごと新品にして製作するしかない」と思われていることがあります。そうなると、貯蔵品の全てが無駄になってしまいます。南海電気鉄道様も同様に、この点を悩んでおられました。
前述のとおり、当社では〈書き換え〉と〈追記〉という対応が可能であるため、貯蔵品の一部を修正することで再利用できます。修正を要する箇所が50段のうちの1段だけであれば、作業量は少なく済み、結果としてコストの削減に繋がるのです。
もちろん、すべての貯蔵品を再利用できるわけではありません。例えば、頻繁に表に出るのは「回送」という表示。その段だけが太陽光の紫外線により色褪せたり、破れやすくなっていたりすることもあります。しっかり「再利用できるかどうか」を当社で判断し、貯蔵品を活かす方法を模索しました。
ご要望に正面から向き合い、丁寧に製作を進めたことで、お客さまとの関係をより強固なものにすることができました。まるごと新品に取り替えることが通常であるなか、〈書き換え〉〈追記〉という修正方法を提案したことが成功の鍵に。
行先方向字幕の製作は簡単そうに見えて、高い専門性とまめな作業が要求される、奥の深い仕事です。昨今では製作の担い手が少ないこともあり、関西圏をはじめとした多くの鉄道事業者様からもご依頼をいただいています。長年にわたる実績の積み上げが、多くの方々からのご相談に繋がっていると自負しています。